ユダヤ財閥の支那経済制覇と上海ミャンマー鉄道の建設

先年支那は幣制改革を断行して、南京政府の発行する紙幣を交換に、支那民衆が命より大切に蓄えている銀を全部巻き上げてしまった。すなわち銀国有を実施したのであるが、これは蒋政権の紙幣による支那統一であって、この紙幣を握らせられた民衆は、この紙幣を紙屑にする覚悟がなければ、蒋政権を離れることはできない。この大政策はいったい誰の提案したものであろうか。現英国の財政顧問として、飛ぶ鳥も落とす大勢力を有する、ユダヤ人リース・ロス博士の提案によるものである。その結果、英国およびユダヤ財閥は南京政府の壊倒を防ぐと同時に、日本の北支進出を食い止めて、日本勢力の南下を予防し、そのユダヤ投資の将来を保証したのである。それならばなぜ日本の北支進出を銀国有が阻止するのであるか。

これは今述べた通り、北支民衆は銀の代わりに握らせられた蒋政権の保証する紙幣を紙屑にする覚悟がなければ、日本と反対の立場にある蒋政権と分離して、日本の側に立つことができないからである。

またこの銀国有ということによって、この銀を直接取り扱ったユダヤ財閥は莫大の利益を獲得したのである。リース・ロス博士は先年夏に日本へ来た人でもあるが、彼の出身はポーランドユダヤ人である。そしてこの銀国有の問題は昨年8月、ロンドンに開かれたるユダヤ人会議において討議せられ、その結果、支那幣制改革に要する国庫準備金として、まず英国は南京政府の1千万ポンドの借款に応じ、その金は支那第一のユダヤ財閥の巨頭サツスーンが引き受けることに決定されたものである。

先般張学良が西安において蒋介石を逮捕し、内外を驚かしたが、当時その生死不明と共にまず影響を現したのは支那の財界で、ことに蒋政権の先に発行した紙幣が大動揺をきたし、我が国も当時多少の影響をこうむったのであるが、その際一般に最も心配されたものは何であるかと言えば、この紙幣があたかも露国政府転覆当時のロマノフ紙幣のように、またドイツ帝国崩壊時におけるマルクのように、大暴落をきたし、これがため支那に経済的大危機が到来するであろうと言うことであった。しかし事実はこの予想に反した。この西安事件が起こると同時にユダヤ財閥を背景とする宋子文がまず第一にユダヤ銀行に駆けつけた。その結果ユダヤ財閥は、支那の紙幣に対しては、彼らが保証する旨の声明を発した。この一声明におってさすが動揺をきたした紙幣の暴落は一度に止まってしまい、支那紙幣の市価は依然今までの価値を保持することができた。この一事をもってみるもいかに支那におけるユダヤ財閥の勢力の牢固たるものであるかということが窺われるのである。

目下、支那におけるユダヤ財閥は、新旧二派の種類があって、旧ユダヤ財閥の表面に踊るもの、すなわち蒋介石である。新ユダヤ財閥の表面に踊る者、すなわち宋子文である。もしも以上の事が事実であるならば、現支那を観察する上において、英国の勢力にカモフラージュされおるユダヤ財閥の勢力を度外視して、支那の真相をつかむことができようか。

先般、南京政府は上海を起点とし、杭州、南昌、長沙、貴陽、雲南を経て、略揚子江と平行に、ビルマに到る延々5千5百支里、日本里程の約820里にわたる鉄道敷設を計画した。その費用は1千500万ポンドで、その諸材料は英国政府が供給し、これがため支那政府の発行する国債はユダヤ銀行団が割引して引き受けることになった。この上海よりビルマに到る大動脈の完成は、表面英国勢力の伸長であると同時に、その実際においてはユダヤの資本的勢力のビルマへの進出にほかならないのである。すなわちこの開拓せられ行く沿線の大富源、無限の資本を擁するユダヤ財閥の開発にまかせられるのである。我が北支進出の停頓に反して、ユダヤ財閥の支那の西南部および西北方奥地への進出発展がいかに目覚ましいことであろうか。

以上は最近世上は現れたユダヤ勢力の一端を述べ、もっとユダヤ民族に対する、ほんの概念を読者に与えんとしたに過ぎないのであるが、とにかく、この非常時において、ユダヤ民族から我々は非常な影響をこうむっていることだけは、一般に了得し得られたと思う。

ユダヤの人々を説くにあたって、最初にかくのごときことを述べたのは、単にユダヤ民族研究の必要を強調する目的ばかりではなく、彼らの最も得意とする、また彼らの生命とする平和戦から、日本は過去および現在において、いかなる影響をこうむってきたかということを内にかえりみつつ、ユダヤ民族は決して我々とは無関係なものではないということを頭において、本書を読了して頂きたいからである。

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