ユダヤ人の世界人口並びに主要諸国及び主要都市における人口について

ユダヤ人の活動を知る上において、その人口を知ることは、すこぶる重要である。ユダヤ人の総人口は1930年度のユダヤ人側の調査によると、全世界で1545万9019名である。ここに注意しておきたいのは、ユダヤ人自らがいうユダヤ人とは、ユダヤ教を奉ずるユダヤ人を指すのであって、たとえユダヤ種族の人間でも、キリスト教とか回教とかに改宗したものは、ユダヤ人とは言わない。

これはかの宗教民族たる面白い所で、我々日本人等の考えとは非常に違って居る所である。もし日本を仏教国と仮定するならば、ユダヤ式にいえば、キリスト教徒や天理教徒は、日本人の中に数えられないという様なことになる。したがって米国辺にいるユダヤ人は、以前米国人がユダヤ人を差別待遇するのを憤って、

「我々は米国に国籍を有する真の米人である。ユダヤ人とは民族の名称ではなく、単に宗教的名称に過ぎない、しかるに米国人が、我々を特殊民族扱いするのはけしからん」

などと自分に都合の良いことを言って、米国政府に突っ込んだこともある。しかしながらユダヤ人はご承知の通り、種族としてはセム族であって、人種学上アングロサクソンとは、全然その発生を異にしている。少し横道に入ったが、このユダヤ教を奉ずるユダヤ人の総人口の、世界分布の状態を、表で現すと次のごとくである。

本表は著者の外遊当時の調査で古くなったが、大観するには差し支えないから本書改訂に当たってこのまま残し、最近の人口表は本章末に新たに加えることにした。

右のユダヤ人口の第二表の下段に、主要都市の人口を掲げて置いたが、一見すれば解る通り英国の29万7千人のユダヤ人中、17万5千はロンドンに、合衆国330万中、150万はニューヨークに住んでいる有様で、ユダヤ人は決して田舎には住まず、各国主要都市に集中している。したがってその人口に比し勢力は自ずから大である。帝政時代露都には24時間以上、ユダヤ人は滞在することができなかったが、革命後どしどし露都に集中し、目下モスクワの人口220万中、50万はユダヤ人の占むるところとなっている。

前表以外ユダヤ数を奉じないユダヤ人種、すなわち改宗ユダヤ人、混血ユダヤ人等、広義の意味におけるユダヤ人は更に多い。これを前の純なるユダヤ人と合すると、世界で約5,6千万はあろうと言われている。そうするとおよそドイツ人近くの人口がある訳である。殊に彼らは改宗しても、雑婚しない習慣を持っている。

例えば、サロニカの市には多数の回教ユダヤ人がおる、彼らは表面的には、赤いトルコ帽をかぶった回教徒であるが、その結婚は依然ユダヤ人間のみに行われ、周囲のトルコ人とは絶対に結婚しない。かの青年トルコ党に参加し、後トルコの大蔵大臣となったジャウイット・バシャは、実にこのサロニカにおける回教ユダヤ人である。

したがってユダヤ人自身は、改宗者をユダヤ人あるいジュとして数えないが、たとえ宗教は変わっても、ユダヤ種族であることについては、肉体的にまた伝統的、民族的習癖において、他種族と異なっているのはもちろんである。しかも混血ユダヤ人でさえ、その習癖において、ユダヤ系統を強くうけていることは、一般に認められている事実である。その原因は混血ユダヤ人はユダヤ婦人の教養を受けるからで、ユダヤ教では、ユダヤ婦人はユダヤ民族の利益をもたらす場合においてのみ、異教徒との結婚を許し、ユダヤ男子は、異教徒との結婚を厳禁されている。それゆえ混血ユダヤ人は必ずユダヤ婦人を母とし、異教徒を父としたもののみ生ずる訳である。

この一点を見ても、ユダヤ人がいかにその種族の純粋と、ユダヤ式伝統の保持に忠実であるかを、窺知することができよう。ユダヤ人等は、世界中ユダヤ人くらい種族的純潔を保つ民族は無いと言っているが、実際自慢するだけの理由はあるのである。

しかし純潔を保つユダヤ人にも例外がある。それは露国のユダヤ人である。彼らはロシア婦人とどしどし結婚している。ロシア婦人もまた自らすすんでユダヤ人と結婚する。その理由はどこにあるか、露国は多くの人々の想像しているように、理想的共産主義が行われている訳でもなければ天国でもない。実はその正反対のこの世の地獄である。目下ユダヤ人は反ユダヤ主義によって、ソビエト政府の首脳部から一掃され、大臣級には一人のユダヤ人も影も止めないが、しかし依然としてユダヤ人は、露国一般社会の中堅をなしている。官吏・商人・金持・家主はもちろん技士、工場支配人、医師、弁護士、音楽家、芸術家、俳優、教師等いやしくも社会生活の中心たる職業、殊に知的職業にはみなユダヤ人が活動している、したがってその生活状態は、一般露人に比しすこぶる優良である。

またロシア婦人は、ロシア人に嫁しても、単にその虚栄心を満たされないのみでなく、その生活さえ保証されない。要するにロシア人と結婚すれば、多くは乞食生活をしなければならぬ。しかるにユダヤ人と結婚すれば、とにかく普通の人間らしい生活ができる、それゆえ彼女等は、心の中では「ジュー」などとユダヤ人を卑しめつつも、ユダヤ人に嫁するのである。中には虚栄や自己の生活上からばかりでなく、一家一族の生命財産の保障を得んがため、旧貴族の婦人等が、その夫と相談の上、涙を呑み恥を忍んで、ユダヤ有力者に再婚しているものもある。

一方共産主義下におけるユダヤ人は、その宗教的伝統を忘れ、これ幸いとロシア美人を拉して勝ち誇っている。もちろん露国ユダヤ人が、みなロシア婦人と結婚している訳ではない。一部の者ではあるが、これはフランス革命後、同化主義ユダヤ人が現れたと同様、ユダヤ民族として特異な現象である。

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