参考のため、フリーメーソンの習慣と表徴とについて、その概要を紹介してみよう。全世界のフリーメーソン結社員は、お互いに兄弟と呼んでいる、したがってフリーメーソン同志には国境がない、インターナショナルである。たとえ戦争で両国相戦っても、戦闘間相手が兄弟であると解れば、撃ち合いを止め、握手するというくらいである。
またフリーメーソンは3の数を非常に重んずる、第一その教えが自由、平等、博愛の3つからなっている。それで結社員がフリーメーソンに関する書物を認めるときには、文句の始めに3つの教えすなわち三点を打つ規定がある。
これがためフリーメーソン反対者は、結社員を「三点兄弟」のあだなをつけている。またドーアのノックも3つ打つ、徽章としては三角定規とコンパスとが用いらるる、三角形はフリーメーソンのいわば紋章である。
しかしこの3を用いるのはほかにもいわれがある、前に述べたフリーメーソンの創設者と伝えらるるユダヤの名工ヒラムは、最も完全なメーソンだ、彼の建築は当時における最も貴重な建物であった、このヒラムはその弟子の4人のものから、建築上の秘伝を明かすように強迫されたが、ヒラムはこの強要に屈せず、断乎としてこれをはねのけた、これがため彼はついに4人のため殺されてしまった。
この殺人罪を犯した4人の中一人は捕らえられたが、あとの3人はついに逃亡してしまったのであるが、これがためヒラムは実に忠実なる義務の遂行者である、その模範であるというところから、ヒラムに関することは、すべてフリーメーソンでは重要視されている、そこでこのヒラムを殺して逃亡した3人から3の数を用いるのであると、ある外国人は私に説明したことがある。
とにかく角三点、三角定規、三本の柱、三つのノック等三がフリーメーソンの表象として用いられている、このほか槌、コンパス、地球、火焔のある星も用いられている、また火焔の星の代わりに三角を二つ重ねたパンダグラムを用いることもある、このパンダグラムはユダヤ民族の紋章で、ユダヤの国旗、ユダヤ軍旗にはみなこの印が用いられてある、すなわち日本の日の丸に相等したものである、フリーメーソンが△の印を用いるのは、ユダヤの紋章を半分にしてつけているのであると解釋している人もある。
また結社員同志が、お互いに認識するために、いろいろの記号や暗号が定められている、合言葉、握手の仕方、危険信号、援助信号等一定したものがあるそうである、また服装等も色々変わったものを用いる習慣があるが、これは敢えて知る必要もあるまいから説明はこのくらいにして置く。